米ドルの取得単価を求める方法とは(総平均法に準ずる方法)
両替・配当・売却代金と、違うレートで手に入れた米ドルを使ったときの原価の求め方。国税庁の質疑応答事例で示された総平均法に準ずる方法を、ダミーの数値で説明します。
米国株の為替差損益とはでは、為替差損益は米ドルを使ったときに、使った米ドルの取得原価との差で確定することを説明しました。では、両替、配当、売却代金と、違う円換算のレートで手に入れた米ドルを使ったとき、その原価はいくらでしょうか。この記事では、国税庁の質疑応答事例で示されている総平均法に準ずる方法の考え方と式、ダミーの数値での計算例、計算する側で決めておく必要がある細かな扱いについて順に説明します。
使った米ドルが円でいくらかを知る
米ドルは、両替したとき、配当を受け取ったとき、株を売ったときで、取得したときの円換算のレートが違います。為替差損益を求めるには、使った米ドルについて「取得したときに円でいくらだったか(取得原価)」と「使ったときに円でいくらになったか(円換算額)」の両方が必要です。使ったときの円換算額は、円転なら受け取った円額、それ以外ならその日の為替相場から分かります。一方の取得原価は、手元の米ドルがひとつの残高として混ざっているため、「どのレートで取得した米ドルを使ったか」を決めないと分かりません。そのために、取得のたびに、残高全体の取得にかかった総額と 1 ドルあたりの平均取得単価を計算して把握しておく必要があります。
国税庁の質疑応答事例では、外貨建預金の払出しについて、総平均法に準ずる方法で取得価額を求める考え方が示されています。取得のたびに残高全体の平均取得単価を更新し、使うときはその単価で原価を出す方法です。
総平均法に準ずる方法
総平均法に準ずる方法では、米ドルの取得のたびに、次の式で残高と平均取得単価を更新します。
- 新しい残高 = 旧残高 + 取得した米ドル
- 新しい平均取得単価 =(旧残高 × 旧平均取得単価 + 円建ての取得原価)÷ 新しい残高
円建ての取得原価は、取得の種類で決まります。円のやり取りがない取得は、所得税基本通達 57の3-2 に沿って、米ドルが動いた日の為替相場の仲値(TTM)で円に換算します。
| 取得の種類 | 円建ての取得原価 |
|---|---|
| 円を米ドルに両替 | 実際に支払った円額(手数料やスプレッド込み) |
| 配当・分配金・利息の受取 | 受け取った米ドル × 入金日の TTM |
| 米国株の売却(外貨決済) | 受渡金額の米ドル × 受渡日の TTM |
使うときは平均取得単価で原価を出す
米ドルを使うのは、円に戻すとき、米ドルで株を買うとき、米ドル建ての費用が引き落とされるときです。いずれも、その時点の平均取得単価で原価を求め、円換算額との差が為替差損益になります。
- 為替差損益 = 円換算額 − 使った米ドル × 平均取得単価
| 使い方 | 円換算額 |
|---|---|
| 円に戻す(円転) | 実際に受け取った円額 |
| 米国株を買う(外貨決済) | 使った米ドル × 受渡日の TTM |
| 米ドル建ての費用(ADR の管理手数料など) | 引き落とされた米ドル × 引落日の TTM |
このうち見落としやすいのが、米ドルで株を買う場合です。円は動きませんが、国税庁の質疑応答事例では、外貨をほかの資産に替えたときに為替差損益を認識する考え方が示されています。使った米ドルをその日の為替相場で円に換えて株を買ったものとして扱い、その米ドルの為替差損益をこの時点で確定させます。株そのものの損益は、別に株式の譲渡所得として計算します。
使った分だけ残高は減りますが、残った米ドルの平均取得単価は変わりません。次に取得があるまで、同じ単価を使い続けます。
計算の例
米ドルの残高がない状態から、1 年の間に取得が 2 回、使用が 2 回あった場合で見てみます。
| 日付 | 取引 | 米ドル | 円建て原価または円換算額 | 残高 | 平均取得単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3/10 | 両替で取得 | 1,000.00 | 150,000 | 1,000.00 | 150.0000 |
| 6/30 | 配当で取得(TTM 144.00) | 200.00 | 28,800 | 1,200.00 | 149.0000 |
| 9/12 | 株の購入(TTM 147.00) | 600.00 | 88,200 | 600.00 | 149.0000 |
| 11/20 | 円転(受取 93,000円) | 600.00 | 93,000 | 0.00 | — |
数値はダミーです。
- 3/10 に両替で 1,000.00ドルを 150,000円で取得しました。残高は 1,000.00ドル、平均取得単価は 150,000 ÷ 1,000 = 150.00円です。
- 6/30 に配当で 200.00ドルを受け取りました。この日の TTM が 144.00円なので、円建ての取得原価は 28,800円です。残高は 1,200.00ドル、総原価は 178,800円になり、平均取得単価は 178,800 ÷ 1,200 = 149.00円に下がります。損益はまだ生じません。
- 9/12 に 600.00ドルで株を買いました。この日の TTM が 147.00円なので、円換算額は 88,200円です。使った米ドルの原価は 600.00 × 149.00 = 89,400円なので、差損 1,200円です。残高は 600.00ドルに減りますが、平均取得単価は 149.00円のままです。
- 11/20 に残りの 600.00ドルを円に戻し、93,000円を受け取りました。原価は同じく 89,400円なので、差益 3,600円です。
年間の為替差損益は、取引ごとの差損益の合計で、この例では 差損 1,200円 + 差益 3,600円 = 差益 2,400円です。
計算する側で決めておく扱い
式は単純ですが、実際に計算すると次の点を決めておく必要があります。
- 取引を認識する日。米ドルが実際に動いた日(受渡日、入金日、引落日)で認識します。株の売買は、約定日ではなく米ドルが実際に動く国内受渡日で認識するのが原則です。前年12月に約定して1月に受け渡された取引は、1月の取引になります。
- 端数。米ドル × レートで求めた円額に生じる円未満の端数を、どの時点でどう丸めるか。法令や通達に取引単位の端数処理を定めた明文はありません。
- 同じ日の順序。同じ日に取得と使用がある場合、どちらを先に処理するかで平均取得単価が変わります。
- TTM の入手。配当の受取、外貨決済の売買、米ドル建ての費用のように米ドルだけが動く取引では、証券会社の履歴に円換算のレートは残りません。計算するときに、取引の日ごとの TTM を別に調べて当てる必要があります。
本サービスでの計算
本サービスは、上の方法をもとに次の扱いを定めて、CSV の取引を機械的に計算します。
- TTM は、本サービスが保持している三菱UFJ銀行の公表値を、取引の日ごとに自動で当てます。ご自身で調べる必要はありません。通達 57の3-2 では、継続して使う合理的な相場であればよいとされており、三菱UFJ銀行の公表値は過去の日次の値まで公開され、実務で広く参照されているため、TTM を使う取引のすべてにこの値を継続して用います。認識日が銀行の休業日なら、その前の直近の営業日の値を使います。
- 端数は、取引ごとに円未満を切り捨てます。総原価は常に整数円で保持し、平均取得単価は必要なときに 総原価 ÷ 残高 で求めます。帳簿を整数円で付け、明細を 1 行ずつ検算する実務の慣行に合わせた扱いです。
- 同じ日の取引は、取得 → 口座間の振替・移動 → 使用の順に処理します。
- 残高として扱うのは、SBI証券の口座と、明細の投入または手入力で加えた銀行口座にある米ドルです。銀行で両替して証券口座へ送った米ドルは、銀行側で支払った円額が取得原価です。ドコモSMTBネット銀行(旧住信SBIネット銀行)の外貨預金と円預金の明細を投入すると、両替の円額を突き合わせて原価を決め、送金先の証券口座まで引き継ぎます。
- 明細も手入力も加えていない口座から証券口座へ送った米ドルは、入金ごとに原価の決め方を「確認」のステップで選びます。以前に証券口座から出金した分を戻すならその単価、送金元での両替の円額が分かるなら利用者入力値、どちらもなければ入金日の TTM による推計(参考値)です。推計を使った年の明細台帳PDF には透かしが入ります。加えていない口座の中で行った両替・円転・利息は、計算の対象外です。
1 行ずつの計算根拠(取引日、TTM、取得単価、差損益)は、有料の明細台帳PDFに記載します。
出典
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